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不動産購入時にその資金の一部を親に出してもらった
離婚をする際に,不動産の財産分与を行うわけですが,その場合に,夫婦の親から不動産購入資金の一部を出してもらっていたとき,どのように財産分与を行うべきでしょうか?
このような質問はよく受けるので,ここで説明してみようと思います。
例えば,ある夫婦が,婚姻後,4000万円でマンションを購入したとします。その際,夫の父親から1000万円,妻の母親から500万円を援助してもらい,夫が残金2500万円について住宅ローンを組んで,支払いをしたとします。
その後,夫婦は,離婚することになり,現時点の不動産の価値は,4500万円になっていました。夫の住宅ローンの残額は,2000万円です。
この場合,どのように財産分与を行うのがよいでしょうか。
一般的には,次にように考えられています。
まずは,不動産購入時の資金を割合化しましょう。
1000万円÷4000万円=25%(夫の父親の援助分)
500万円÷4000万円=12.5%(妻の母親の援助分)
2500万円÷4000万円=62.5%(財産分与対象財産)
となります。
これを現在価値に引き直します。
4500万円×25%=1125万円(夫の父親の援助分)
4500万円×12.5=562万5000円(妻の母親の援助分)
4500万円×62.5%=2812万5000円(財産分与対象財産)
そして,実際には,住宅ローンが2000万円あるので,2812万5000円-2000万円=812万5000円となり,これが不動産の関する夫婦のプラスの財産部分となります。
仮に,夫がこの不動産を取得するのであれば,812万5000円の半分は,妻に権利があるので,406万2500円を妻に支払い,妻の権利を買い取ることになります。
また,562万5000円は,妻の母親が援助した部分となり,離婚に際して,夫から妻に対して,支払いを行い清算することが多いので,夫から妻に対して,562万5000円を支払うことになります。
以上,夫から妻に対して,合計968万7500円を支払って,夫が不動産を取得するということになります。
このような計算方法は,離婚調停で,不動産の財産分与の話がまとまらない場合に,裁判所が提案してくるものです。
離婚と不動産
離婚をする場合,住宅ローンってどうなるの?
という質問が非常に多いので,説明をしてみます。
Q
夫の名義の土地・建物がある。土地・建物の時価額は,4000万円である。別居した時点で,住宅ローンは,3000万円であり,債務者は夫である。この場合,住宅ローンはどうなるの?
A
まずは,財産分与を行う際にどの時点の財産を分けるのかという話からです。財産分与を行うにあたっては,基準時に存在する夫婦の財産を分けることになります。
一般的には,基準時=別居日ですので,ここでは,それを前提に話を進めます。
【夫が不動産を取得する場合】
仮に,夫が離婚後,不動産を単独で所有するのであれば,土地・建物の時価額4000万円-基準時住宅ローン3000万円=1000万円の半分である500万円を妻に支払うことになります。
もちろん住宅ローンは,夫が負担します。
【妻が不動産を取得する場合】
次に,妻が離婚後,不動産を単独で所有する場合ですが,先ほどとは反対に,妻から夫に500万円を支払うことになります。
問題は,住宅ローンです。住宅ローン3000万円の債務者は夫であり,債権者は銀行です。
銀行からすれば,債務者が勝手に代わってしまうのは困ります。なぜなら,夫に資力があると思って,銀行は夫にお金を貸しているのに,気付いたら債務者が妻になっていたということでは,貸したお金を返してもらえないかもしれません。
そこで,銀行が了解しない限りは,住宅ローン3000万円の債務者を妻にすることはできません。
だったら,不動産を妻名義にして,住宅ローンだけ夫が支払えばいいじゃないか!と思うかもしれませんが,それはできません。
一般的には,不動産には抵当権という権利が付けられています。この場合でいうと,銀行は夫に住宅ローン3000万円を貸し付けるが,もしも,夫が返済できなかった場合には,不動産を第三者に売り飛ばして,売った代金から住宅ローン3000万円を回収します。
つまり,名義を妻されると抵当権を実行できなくなるので,銀行は困ります。一般的に,銀行は,債務者が不動産の名義を勝手に変えられないようにしています。お手元の抵当権設定契約書をご確認してみて下さい。
また,仮に,銀行が「不動産の名義を妻に変更して,今後も夫が住宅ローンを支払うことにしてもいいよ。ただし,不動産は担保に入れたままにするよ。」と言った場合に,妻としては,本当にそれでよいのか?という問題があります。
離婚後,元夫は自分が住んでもいない住宅のローンを支払わないといけません。もう支払いがバカバカしくなって,住宅ローンの支払いをしなくなるかもしれません。
すると,銀行が抵当権を実行して,不動産を競売にかけ,第三者に売却する可能性があります。その場合は,妻は,住んでいる建物から出て行かなければならなくなります。
妻からすれば,土地・建物を取得するのであれば,住宅ローンも引き継ぐべきです。しかし,それができるか否かは,銀行が了解するかどうかなのです。
というわけで,夫婦のみで住宅ローンの債務者の変更はできないので,銀行に相談して,住宅ローンを付け替えましょう,というのが結論です。
養育費の計算 算定表じゃ分からない
前回のコラムに引き続き,裁判所の算定表じゃ分からない場合の説明をしていきましょう。
さて,今回は,以下の例で考えてみます。
妻は,夫と離婚を考えている。妻と夫の間には,10歳の子がいる。夫は離婚歴があり,前の妻との間には,16歳の子がおり,現在も養育費の支払いを行っている。妻の年収は100万円,夫の年収は500万円,前妻の収入は300万円とし,全員が給与所得者である。なお,前妻は,再婚していない。また,ここでいう年収は,いわゆる額面収入である。
以上の前提で,妻は離婚する際に,夫との間の養育費の金額をいくらにするのが適当でしょうか?という問題です。
裁判所の算定表をもってしても計算できません。ネットに落ちている養育費の計算機を使っても算出できないと思われます。アナログな方法ですが,このような場合は,手計算をすることになります。
養育費の計算については,3段階に分けて理解するとよいです。
第1 基礎収入
基礎収入割合については,当事務所のコラム「婚姻費用の計算 算定表じゃ分からない」をご参照のこと。URL貼っときます。
https://fujii-law-office.com/%e5%a9%9a%e5%a7%bb%e8%b2%bb%e7%94%a8%e3%81%ae%e8%a8%88%e7%ae%97/
妻の年収は100万円なので,100万円×50%=50万円が基礎収入になります。
夫の年収は500万円なので,500万円×42%=210万円が基礎収入になります。
前妻の年収は300万円なので,300万円×42%=126万円が基礎収入になります。
第2 子の生活費
子の生活費=義務者の基礎収入×子の指数÷(義務者の指数+子の指数)
指数とは生活費指数です。夫婦は「100」,0歳~14歳が「62」,15歳~「85」です。
もしも,前妻との間の子がおらず,夫婦のみであれば,上記の計算式に数字を代入すれば,「子の生活費」が算出されるのですが,この度は,前妻の子もいるので,少し計算が変わります。
夫と前妻との間で,夫負担すべき前妻との間の子の生活費指数を求めることになります。
夫と前妻との間の子は16歳なので,生活費指数が「85」です。しかし,夫はこの「85」を全て負担しているわけではありません。前妻も養育しているわけですから,夫と前妻で「85」を分かち合っているはずです。計算します。
85×210万円÷(210万円+126万円)=53.125
つまり,夫が負担すべき前妻との間の子の生活費指数は,53.125となります。
これを前提に,計算をすると,以下の通りです。
210万円×62÷(100+62+53.125)=60万5229円
これが「子の生活費」です。ここでは,計算が面倒なので,60万円とします。
第3 義務者の養育費分担額
義務者の養育費分担額=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者基礎収入+権利者基礎収入)
先ほど計算した子の生活費を夫婦で分担するので,この計算をします。
60万円×210万円÷(210万円+50万円)=48万4615円
48万4615円÷12ヶ月=4万0384円≒4万円
というわけで,この場合は,養育費4万円が適当であると計算することができます。
以上のように,一概に養育費といっても,場合によっては算定表のみでは計算できない場合もあります。
自分の場合は,養育費の計算ってどうするの?
裁判所の算定表じゃ分からないんだけど・・・
という方がいれば,ご相談下さい。
とはいえ,前妻の収入は分からないことが多いので,計算式は分かっても代入すべき数字が分からんという場合もありますよ。
婚姻費用の計算 算定表じゃ分からない
今回は,婚姻費用の計算について,解説を行いたいと思います。
婚姻費用と養育費については,裁判所が算定表を用意していますので,裁判所の用意している算定表でこと足りる方は,「裁判所 養育費・婚姻費用算定表」で検索かけてみて下さい。一応,URLも貼っておきます。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
さて,問題は,子どもが二人いて,夫婦が各々,子の監護養育をしていたり,夫婦の一方が不貞行為を行っているにもかかわらず,婚姻費用を請求してきた場合です。
これらの場合は,裁判所の算定表を見ても,結局,婚姻費用や養育費がいくらになるのか分からないのです。
では,そんな場合は,どうするの?
ということですが,計算をします。
今回は,以下の例で,計算してみます。
例えば,夫と妻には5歳と16歳の子がおり,妻は5歳の子のみを連れて出て行きましたが,夫が婚姻費用の支払いをしないので,妻から夫に婚姻費用分担請求を行ったとしましょう。夫は給与所得者で,年収500万円,妻も給与所得者で,年収100万円と過程しましょう。なお,ここでいう年収は,いわゆる額面収入です。
婚姻費用の計算については,3段階に分けて理解するとよいです。
第1 基礎収入
夫婦各人の基礎収入を計算します。以下のように計算します。
給与所得者の場合は以下のようになります。
給与所得者(万円) | 割合(%) |
0~75 | 54 |
~100 | 50 |
~125 | 46 |
~175 | 44 |
~275 | 43 |
~525 | 42 |
~725 | 41 |
~1325 | 40 |
~1475 | 39 |
~2000 | 38 |
自営業者の場合は以下のようになります。
自営業者(万円) | 割合(%) |
0~66 | 61 |
~82 | 60 |
~98 | 59 |
~256 | 58 |
~349 | 57 |
~392 | 56 |
~496 | 55 |
~563 | 54 |
~784 | 53 |
~942 | 52 |
~1046 | 51 |
~1179 | 50 |
~1482 | 49 |
~1567 | 48 |
今回は,夫は給与所得者で年収500万円なので,500万円×42%=210万円となります。つまり,夫の基礎収入は,210万円です。
次に,妻は給与所得者で年収100万円なので,100万円×50%=50万円となります。つまり,妻の基礎収入は,50万円です。
夫の基礎収入=210万円=X
妻の基礎収入=50万円=Y
第2 権利者世帯に割り振られる婚姻費用=Z
Z=(X+Y)×(100+62)÷(100+100+85+62)
という計算式になりますが,この「100」とか「62」とか「85」は,生活費指数というもので,夫と妻の生活費指数は「100」,子どもについては,0~14歳が「62」,15歳~「85」となります。
つまり,上記の計算は,家族全体の内,妻と5歳の子の生活費の割合を出して,その割合に夫婦の基礎収入を乗じて,権利者世帯に割り振られる婚姻費用の額を算出しているのです。
(210万円+50万円)×162÷347=121万3832円
第3 義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額=Z-Y
121万3832円-50万円=71万3832円
71万3832円÷12ヶ月=5万9486円≒6万円
実際に,調停や審判となれば,裁判所は,月額6万円の婚姻費用を認めることとなると思います。
以上のように,婚姻費用や養育費といっても算定表には記載されていない場合もありますので,その場合は,計算します。
説明をしても,「分かりくいわ!」と思われる方も多いと思いますので,そんなときは,弁護士に相談してみて下さい。