治療打ち切り・症状固定とは

治療の打ち切り

1 治療が打ち切られやすい交通事故の特徴

ここでは,治療の打ち切りとは,加害者側の任意保険会社が被害者の治療費を支払わなくなるという意味で使用します。さて,まずは,治療の打ち切りが生じやすい事故の類型ですが,次のような特徴が見られます。

  1. 自動車修理費用の金額が非常に低廉である(10万円以下)
  2. 診断書に打撲程度の記載しかない
  3. 実際に通院した日数が少ない
  4. 治療の内容が温熱治療や電気治療がメインである

私の経験上では,特に①と②が重視されており,①と②に重複して該当している場合には,1カ月から3カ月程度で治療の打ち切りを受けることが多いです。率直に言えば,①と②に重複する場合には,早期に治療を打ち切られたとしてもやむを得ないと思っています。

 

2 治療の打ち切りが問題となる場合

問題が生じやすいのは,①には該当せず(自動車修理費用が50万円くらい),②の記載内容が頚椎捻挫又は腰椎捻挫で,かつ,③と④に該当している場合です。

私がこのようなご依頼者様にまず,確認をするのが,手足に痺れが生じているかどうかです。頚椎捻挫又は腰椎捻挫と診断された場合で,6カ月通院しても,手又は足に痺れが残り,かつ,痛みや痺れの程度が重く神経ブロック注射又はトリガーポイント注射などを行っている方は,比較的,後遺障害等級14級9号の認定を受けやすい傾向にあると思っています。MRI画像で症状が確認できれば,後遺障害等級12級13号に該当することもあり得ます。

ご依頼者様によっては,実際には,手足に痺れが生じているが,仕事や家事が忙しくて通院できない,注射による治療方法などは知らなかったという方もいらっしゃいますので,まずは,担当医に適切な治療方法を相談してみることを推奨しています。また,MRI検査の実施についても相談してみるとよいでしょう。

ご依頼者がある程度治療を行った結果,手足の痺れが改善していないにもかかわらず,加害者側の保険会社が治療の打ち切りをしてきた場合には,その治療の打ち切りが適切であるかどうか検討する必要がある旨を保険会社に伝えます。

具体的には,担当医に質問状を送付して,治療により症状の改善が認められるのかという点と今後の治療の必要性の点について伺います。担当医において,治療による改善の余地があり,今後も治療の必要性もあるという判断をして頂いた場合には,その資料を基に,保険会社に対して,治療の打ち切りが不当である旨を伝えて交渉をすることになります。

 

3 治療が打ち切られた場合

それでも,結局は,治療の打ち切りがされた場合には,どうするのかという問題があります。この場合には,健康保険を使用して,一部自腹で通院することになります。この際には,注意すべき点があります。必ず,領収書を取っておくことと,通院している病院に対して,自賠責請求用の診断書と診療報酬明細書の作成を依頼しておくことです。

これらの書類を準備した上で,いわゆる被害者請求を行い直接自賠責に治療費などを請求します。損害保険料率算出機構の調査事務所の認定次第ではあるのですが,自腹で支払った部分については,自賠責が支払ってくれる可能性が大きいです。したがって,一時的には,自己負担が生じますが,場合にはよっては,自賠責が後日,支払ってくれることもあるので,治療の打ち切りがあったとしても,直ちに通院を止める必要はありません。

ただし,注意すべき点があります。自賠責が治療費などを支払う否かは,結局は,自賠責において判断する事項なので,必ず被害者請求をすれば,上手くいくというわけではないことと,自賠責に請求する金額が総額で120万円を超えるような場合には,それ以上の支払いはないということです。

ここで,述べていることは,原則的には,1カ月から3カ月以内で,治療の打ち切りを受けた方に対してのお話しですので,通院期間が6カ月を超えるような方には妥当しないと思っておいて下さい。

 

症状固定

1 症状固定について

ここでは,症状固定とは,治癒はしていないが,治療を継続してもそれ以上回復の見込みがない場合を言います。症状固定かどうか,すなわち,治癒はしていないが,治療継続をしてもそれ以上回復の見込みがない場合には,治療が打ち切られます。その理由は,治療の効果がないため,それ以上,治療を継続する意味が失われるからです。

 

2 症状固定後はどうするのか

では,症状固定した場合には,どうするのかということですが,担当医に後遺障害診断書を記載してもらうことになります。後遺障害診断書を書いて頂く際の重要なポイントは,損傷部位などにより異なるのですが,ここでは,後遺障害等級14級9号又は12級13号をメインに記載することとします。

後遺障害診断書の記載の仕方は,実は,お医者様によって,大いに異なります。ここは,本当に弁護士が頭を悩ませるところです。お医者様によっては,非常に詳細に神経学的所見の検査をしてくれて,その内容を見れば,自賠責が後遺障害の認定をするか否かをある程度予想はできるという内容のものあれば,全く神経学的所見の検査を行わず,単に「痺れあり」程度の記載しかないものも散見されます。そこで,ご依頼様には,担当医に対して,どのような検査を行うべきかについて意見を付した文書を交付し,それを病院に持参して頂き,後遺障害診断書の作成を担当医に依頼することで対応しております。

それでも,担当医が神経学的所見の記載がない後遺障害診断書を作成した場合には,まずは,なぜそのような記載を欠くのかの確認から行い,後遺障害診断書に神経学的所見の検査を行った上で,その結果の記入をお願いします。もちろん,ご依頼者様には,事前に後遺障害診断書とはどういったものであるかを説明の上,きちんと検査を担当医に依頼するようにお願いをするのですが,神経学的所見の検査結果の記載を欠くことがしばしばあります。そのような場合には,担当医に書き直すように依頼することがあります。

 

3 後遺障害診断書作成後はどうするのか

後遺障害診断書の作成を終えたら,後遺障害の認定を行うこととなります。後遺障害の認定の方法は,大別すると,被害者請求と加害者請求があります。被害者請求と加害者請求のどちらが有利なのかという問題が提起されることもありますが,私の場合は,状況に応じて使い分けているという感じです。

例えば,治療の打ち切りを受けた場合には,被害者請求をして,最低限の賠償金を取得した上で,保険会社との交渉に臨むという方法を選択する場合もあります。他方で,通院期間,通院日数,治療内容,後遺障害診断書,画像などを確認した結果,後遺障害の認定がされるだろうと判断した場合には,加害者請求を使用しています。

交通事故実務を行うにあたり,極端に,被害者請求が有利であるとか,加害者請求が不利であるとかを感じたことはなく,後遺障害診断書の記載上,後遺障害の認定は困難であると思ったものについては,いずれの手段を用いても後遺障害の認定はされないように感じています。

請求方法によって,認定が変わるというよりかは,既に出来上がっている記録の内容が結果を左右している感触があります。したがって,勝負所は,如何に正確な記録を残していくかということだと思っており,重要なのは,ご依頼者様の症状が,医療記録などに適切に反映されているかどうかでしょう。だからこそ,後遺障害診断書の記載に神経学的所見の検査が記載されていない場合には,担当医に連絡をして,場合によっては,書き直しのお願いをしているのです。

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