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後遺症の等級
1 後遺障害の等級と認定機関
後遺障害は,第1級から第14級まであります。第1級の後遺障害が最も重い症状であり,第14級の後遺障害が最も軽い症状ということになります。後遺障害の等級の認定については,損害保険料率算出機構または裁判所が認定することになります。一般的には,損害保険料率算出機構が認定した後遺障害の等級で問題はないのですが,それに不服がある場合は,同機構に異議申立てをするか,または裁判所で後遺障害の等級を争うこととなります。
2 後遺障害の等級に基づく計算
(1)後遺障害慰謝料
後遺障害の等級により,慰謝料の金額が変わります。被害者本人の後遺障害を等級別に見ると次のようになります。以下赤い本による基準です。
第1級 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
第6級 |
第7級 |
2800万円 |
2370万円 |
1990万円 |
1670万円 |
1400万円 |
1180万円 |
1000万円 |
第8級 |
第9級 |
第10級 |
第11級 |
第12級 |
第13級 |
第14級 |
830万円 |
690万円 |
550万円 |
420万円 |
290万円 |
180万円 |
110万円 |
(2)後遺障害逸失利益
後遺障害の等級が明らかになった場合には,その後遺障害の等級別の労働能力喪失率が分かります。一般的には,以下のような計算式で,後遺障害逸失利益を計算することとなります。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数=後遺障害逸失利益
例えば,基礎収入500万円,後遺障害等級12級,症状固定時の年齢30歳という方がいるとします。
この場合の原則として,次のように考えます。後遺障害等級12級の労働能力喪失率は14%です。労働能力喪失期間の終期は,原則として67歳と考えられていますので,67歳-30歳=37年の労働能力喪失期間があると考えます。37年に対応したライプニッツ係数は,16.7113です。
したがって,500万円×14%×16.7113=1169万7910円が後遺障害逸失利益となります。
一応このような計算式を用いることが通常なのですが,保険会社は,すんなりとは後遺障害逸失利益を支払ってくれません。後遺障害が残ったとしても,実際に行っている仕事との関係においては労働能力が低下していないとか,現実の収入減少がないという理由で,後遺障害逸失利益の支払いを渋ることが多いです。
(3)自賠責の基準
自賠責の後遺障害等級別の保険金額は,次の通りです。まず注意が必要なのは,自賠責の後遺障害等級別の保険金額は,後遺障害による保険金額を全て含んでいます。以下は,介護を要する後遺障害を除いた場合の自賠責での保険金額となります(いわゆる別表第2)。
第1級 |
第2級 |
第3級 |
第4級 |
第5級 |
第6級 |
第7級 |
3000万円 |
2590万円 |
2219万円 |
1889万円 |
1574万円 |
1296万円 |
1051万円 |
第8級 |
第9級 |
第10級 |
第11級 |
第12級 |
第13級 |
第14級 |
819万円 |
616万円 |
461万円 |
331万円 |
224万円 |
139万円 |
75万円 |
(4)赤い本と自賠責の基準との比較
単純に数字だけ見ると,自賠責の基準が高い部分があるのですが,自賠責の場合は,後遺障害により生じた全ての保険金額が表示されています。他方で,赤い本の基準では,後遺障害慰謝料のみの表で,等級別の後遺障害慰謝料の金額と子後遺障害逸失利益を加えることになります。
例えば,後遺障害等級7級の場合で比較します。
赤い本の場合は,後遺障害慰謝料1000万円+後遺障害逸失利益となります。
自賠責の場合は,後遺障害による保険金1051万円となります。
以上のように,赤い本を基準に考えると後遺障害逸失利益分の差が生じることになるのです。