このページの目次
求償権の発生
1 不真正連帯債務
不倫・不貞の慰謝料を法的に正確に表現すると,共同不法行為に基づく損害賠償請求権です。不倫・不貞は,1人ではできません。必ず相手が必要です。2人で,他人の権利を侵害する行為になるので,共同不法行為になります。
共同不法行為から生じた損害賠償債務は,不真正連帯債務と理解されています。被害者は,2人の加害者に対して,いずれに対しても,満額の請求ができます。しかし,加害者のいずれか一方が,弁済をすれば,その弁済の効力が,もう一方の加害者にも及びます。
したがって,例えば,被害者が,加害者Aと加害者Bに対して,総額200万円の共同不法行為に基づく損害賠償債権を有している場合に,加害者Aが,被害者に50万円の弁済を行うと,その弁済の効力は,加害者Bにも及びますので,被害者は,加害者Bに対して,150万円の請求しかできません。
2 求償権の発生
先の例で言うと,加害者Aと加害者Bは,被害者Aに対して,総額200万円の債務を負担しているのですが,加害者Aと加害者Bとの間の責任の割合は別に考える必要があります。
例えば,加害者Aが加害者Bに対して,積極的に不倫・不貞を行うように働きかけを行い,加害者Bが不倫・不貞に応じざるを得ない状況になり,結局,加害者Bは不倫・不貞に至ってしまったという場合を想定しましょう。
この場合,不倫・不貞を行った責任が重いのは,加害者Aです。そこで,加害者Aと加害者Bとの関係においては,その責任を8:2くらいで考えるのが妥当ではないかという結論に至ったとします。
にもかかわらず,加害者Bが被害者に100万円を支払うと,加害者Bは,加害者Aとの関係においては,金銭を支払い過ぎということになります。なぜなら,加害者Aと加害者Bの責任割合は,8:2なので,被害者に弁済すべき金銭の額は,加害者Aが160万円,加害者Bが40万円になるにもかかわらず,加害者Bが100万円を被害者に弁済しているので,加害者Bは,加害者Aとの関係においては,60万円を払い過ぎているということが生じます。
この払い過ぎた60万円のことを求償権と呼んでいます。加害者Bは加害者Aに対して,払い過ぎた60万円を返してくれという請求ができるのです。
3 責任割合
問題となるのは,加害者Aと加害者Bの責任割合です。不倫・不貞の慰謝料の請求を受けた場合には,多くの場合は,加害者Aと加害者Bとの話合いにより,どちらがいくら負担するのかを決定します。
仮に,話合いでまとまらないのであれば,責任割合について裁判で決着することになるのですが,これについては,個別具体的な事案の内容によりけりです。不倫・不貞を行おうと積極的に働きかけたのはどちらなのか,その働きかけに応じた理由は何なのかという個別具体的な事情を考慮して,責任割合が決められます。
不倫・不貞の慰謝料請求を受けた方へ 関連ページ