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行政書士や司法書士との比較
1 遺言の作成について
行政書士や司法書士においても,遺言を作成することができます。もちろん,相続に関する知識が十分にある行政書士や司法書士であれば,適切な遺言を作成することは可能です。
ただ,弁護士としては,遺言の作成の目的を,単に,遺言作成者の意思を反映するためだけに作成するのではなく,事前の紛争予防としての役割を果たしているのかという観点から検討します。
例えば,遺言の作成から派生する法律問題を考えると遺言無効確認訴訟,遺言者作成者から推定相続人に対する金銭の移動があれば,不当利得返還請求訴訟や特別受益の問題に発展します。また,共有物分割訴訟をしなければならないこともあります。
遺言を作成したい方からある程度の事情を聴き取れば,将来派生的に生じる法的問題を事前に潰す遺言書を作成することができます。弁護士は,普段から遺言に関わる紛争を訴訟や審判という形で経験するので,「この遺言がもっとしっかり作成されていれば,そもそもこんな問題は発生しなかったのに。」と考えることが多いです。
弁護士であれば,遺言作成者の意思を反映させることはもちろん,将来の紛争予防の観点から適切な遺言を作成することができるので,遺言の作成は弁護士に依頼した方がよいと思います。
2 遺産分割について
行政書士や司法書士においても,遺産分割協議書を作成することができます。司法書士は,基本的には不動産登記を行うことを業務としておりますので,遺産分割協議書の作成と不動産登記を併せて行うことができるので,非常に頼りがいがあります。
しかし,一度紛争が生じれば,もはや行政書士は当該案件に介入できませんし,認定司法書士も介入できる案件が140万円以下の紛争ですから,介入できる場合が非常に限定されます。
遺産分割に関する問題は,中々複雑な問題が多く,民法の知識をフル活用して事案の解決を行わなければなりません。典型的な例として,被相続人が生前認知症であるにもかかわらず,認知症と疑われる期間に,多額の金銭が相続人の口座に入金されていたという事案では,認知症が疑われる期間の出金が不当利得である可能性があり,また特別受益である可能性もありますし,特別受益であるとしても持ち戻しが免除されている可能性があります。このような事案では,遺産分割調停と不当利得返還請求訴訟を並行して行う必要が出てきます。
このような状況になった場合には,もはや弁護士に依頼する以外に紛争を解決する方法はないと思われます。