前回のコラムに引き続き,裁判所の算定表じゃ分からない場合の説明をしていきましょう。
さて,今回は,以下の例で考えてみます。
妻は,夫と離婚を考えている。妻と夫の間には,10歳の子がいる。夫は離婚歴があり,前の妻との間には,16歳の子がおり,現在も養育費の支払いを行っている。妻の年収は100万円,夫の年収は500万円,前妻の収入は300万円とし,全員が給与所得者である。なお,前妻は,再婚していない。また,ここでいう年収は,いわゆる額面収入である。
以上の前提で,妻は離婚する際に,夫との間の養育費の金額をいくらにするのが適当でしょうか?という問題です。
裁判所の算定表をもってしても計算できません。ネットに落ちている養育費の計算機を使っても算出できないと思われます。アナログな方法ですが,このような場合は,手計算をすることになります。
養育費の計算については,3段階に分けて理解するとよいです。
第1 基礎収入
基礎収入割合については,当事務所のコラム「婚姻費用の計算 算定表じゃ分からない」をご参照のこと。URL貼っときます。
https://fujii-law-office.com/%e5%a9%9a%e5%a7%bb%e8%b2%bb%e7%94%a8%e3%81%ae%e8%a8%88%e7%ae%97/
妻の年収は100万円なので,100万円×50%=50万円が基礎収入になります。
夫の年収は500万円なので,500万円×42%=210万円が基礎収入になります。
前妻の年収は300万円なので,300万円×42%=126万円が基礎収入になります。
第2 子の生活費
子の生活費=義務者の基礎収入×子の指数÷(義務者の指数+子の指数)
指数とは生活費指数です。夫婦は「100」,0歳~14歳が「62」,15歳~「85」です。
もしも,前妻との間の子がおらず,夫婦のみであれば,上記の計算式に数字を代入すれば,「子の生活費」が算出されるのですが,この度は,前妻の子もいるので,少し計算が変わります。
夫と前妻との間で,夫負担すべき前妻との間の子の生活費指数を求めることになります。
夫と前妻との間の子は16歳なので,生活費指数が「85」です。しかし,夫はこの「85」を全て負担しているわけではありません。前妻も養育しているわけですから,夫と前妻で「85」を分かち合っているはずです。計算します。
85×210万円÷(210万円+126万円)=53.125
つまり,夫が負担すべき前妻との間の子の生活費指数は,53.125となります。
これを前提に,計算をすると,以下の通りです。
210万円×62÷(100+62+53.125)=60万5229円
これが「子の生活費」です。ここでは,計算が面倒なので,60万円とします。
第3 義務者の養育費分担額
義務者の養育費分担額=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者基礎収入+権利者基礎収入)
先ほど計算した子の生活費を夫婦で分担するので,この計算をします。
60万円×210万円÷(210万円+50万円)=48万4615円
48万4615円÷12ヶ月=4万0384円≒4万円
というわけで,この場合は,養育費4万円が適当であると計算することができます。
以上のように,一概に養育費といっても,場合によっては算定表のみでは計算できない場合もあります。
自分の場合は,養育費の計算ってどうするの?
裁判所の算定表じゃ分からないんだけど・・・
という方がいれば,ご相談下さい。
とはいえ,前妻の収入は分からないことが多いので,計算式は分かっても代入すべき数字が分からんという場合もありますよ。