婚姻費用の計算 算定表じゃ分からない

今回は,婚姻費用の計算について,解説を行いたいと思います。

婚姻費用と養育費については,裁判所が算定表を用意していますので,裁判所の用意している算定表でこと足りる方は,「裁判所 養育費・婚姻費用算定表」で検索かけてみて下さい。一応,URLも貼っておきます。

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

さて,問題は,子どもが二人いて,夫婦が各々,子の監護養育をしていたり,夫婦の一方が不貞行為を行っているにもかかわらず,婚姻費用を請求してきた場合です。

これらの場合は,裁判所の算定表を見ても,結局,婚姻費用や養育費がいくらになるのか分からないのです。

では,そんな場合は,どうするの?

ということですが,計算をします。

今回は,以下の例で,計算してみます。

例えば,夫と妻には5歳と16歳の子がおり,妻は5歳の子のみを連れて出て行きましたが,夫が婚姻費用の支払いをしないので,妻から夫に婚姻費用分担請求を行ったとしましょう。夫は給与所得者で,年収500万円,妻も給与所得者で,年収100万円と過程しましょう。なお,ここでいう年収は,いわゆる額面収入です。

婚姻費用の計算については,3段階に分けて理解するとよいです。

第1 基礎収入

夫婦各人の基礎収入を計算します。以下のように計算します。

給与所得者の場合は以下のようになります。

給与所得者(万円) 割合(%)
0~75 54
~100 50
~125 46
~175 44
~275 43
~525 42
~725 41
~1325 40
~1475 39
~2000 38

自営業者の場合は以下のようになります。

自営業者(万円) 割合(%)
0~66 61
~82 60
~98 59
~256 58
~349 57
~392 56
~496 55
~563 54
~784 53
~942 52
~1046 51
~1179 50
~1482 49
~1567 48

今回は,夫は給与所得者で年収500万円なので,500万円×42%=210万円となります。つまり,夫の基礎収入は,210万円です。

次に,妻は給与所得者で年収100万円なので,100万円×50%=50万円となります。つまり,妻の基礎収入は,50万円です。

夫の基礎収入=210万円=X

妻の基礎収入=50万円=Y

第2 権利者世帯に割り振られる婚姻費用=Z

Z=(X+Y)×(100+62)÷(100+100+85+62)

という計算式になりますが,この「100」とか「62」とか「85」は,生活費指数というもので,夫と妻の生活費指数は「100」,子どもについては,0~14歳が「62」,15歳~「85」となります。

つまり,上記の計算は,家族全体の内,妻と5歳の子の生活費の割合を出して,その割合に夫婦の基礎収入を乗じて,権利者世帯に割り振られる婚姻費用の額を算出しているのです。

(210万円+50万円)×162÷347=121万3832円

第3 義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額=Z-Y

121万3832円-50万円=71万3832円

71万3832円÷12ヶ月=5万9486円≒6万円

 

実際に,調停や審判となれば,裁判所は,月額6万円の婚姻費用を認めることとなると思います。

以上のように,婚姻費用や養育費といっても算定表には記載されていない場合もありますので,その場合は,計算します。

説明をしても,「分かりくいわ!」と思われる方も多いと思いますので,そんなときは,弁護士に相談してみて下さい。

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